ヒガシユウジのまるごとデザイン

少し先の、地方都市のクリエイティブ

前回は、テイストという曖昧なもので、地方と東京を比べてみたのですが、今回はちょとだけ未来に時を進めて、5年後、10年後、地方にいるクリエイターがどのように変化するのかを考えてみたいと思います。

当たるかどうかは別にして、先が見えない仕事はうまく回らないわけですから、ぼくの考えをベースに少しでも先を覗いてみるのも悪くないかもしれません。

テクノロジーの劇的変化により2025年あたりから30年ぐらいになると、地方のクリエイターは意外と厳しくなるかもしれません。今は豊富に仕事がある人も、「ちょっと用心したほうが良いかも」と言いたくなります。

頭脳資本主義

2020年の東京で働く人の平均年収は595万2400円。福岡県の平均年収は434万円。それに合わせるようにクリエイターの報酬も違います。いやいや、もっと違いがあります。なぜ、東京と福岡の収入格差はあるのでしょうか?

東京は大企業が集積して、地方は中小企業ばかりだからとも言えますが、情報化社会のこの先も収入格差が生まれるには明確な理由があります。

頭脳資本主義という言葉を知ってますか?神戸大学の松田卓也氏が言った言葉ですが、新しい技術、アイデア、新しいビジネスモデルなどがお金になる。そういう経済をいいます。

この頭脳資本主義の特徴は集積のメリットが生じることです。特にWebベースの新規開拓ビジネスはアイデアを短時間で形にしてお金を呼び込むビジネスです。そのためにはエンジェル投資家や技術者が周りに必要です。つまり人や資金が集積するからこそ可能になるのがこの経済なのです。

シリコンバレーはその代表的なところですが、AIだったらサンフランシスコのベイエリア、東京だったら渋谷、どこも賃料が高いのですがそこに居を構えているのはそんな理由もあるからです。

具体的に言うと、高い志を持った起業家やクリエイターが、ワインパーティーや食事会などを通じて情報を蜜にやり取りする中でアイデアが生まれ、同士が結ばれ、資本を巻き込み、新しいサービスを金融商品のように証券化してまたお金を呼び込む。

それを求めて地方から東京へとどんどん人が集まってきて、より一層集積度が増していき、好循環が回り経済は発展していく。それに反比例するように地方はどんどん減っていくというわけです

地方にいても、有名なインフルエンサーが「新しいビジネス」を生み出しているという声もあるでしょうが、有名なインフルエンサーという条件が必要でとても再現性は低く、全般的な地方のクリエイター事情にあてはまらないでしょう。

多くの場合、頭脳資本主義では地方には人が少ないために集積メリットが得られないから所得が伸びず、高い志を持っていたとしても一人で孤立してしまいますし、そのような人は都市部へと向かってしまいます。

未来は甘いか?酸っぱいか?

ただこの状況は少し先の未来に変化する可能性があります。なぜなら指数関数的に進歩するテクノロジーが都心部と地方の関係を変えるからです。AI(機械学習)の指数関数的な進歩がVRを大きく変え、まるで「どこでもドア」みたいな日常を経験することができるようになるでしょう。

地方にいるクリエイターが、VRの「どこでもドア」を使って会員制メタバースなどに参加して現実と変わらない体験ができるのならば、地方にいても最先端の情報と人脈を作ることだってできてしまいます。アイデアや力のある人にとっては楽しい未来かもしれません。

その一方、それは東京に住んでいるクリエイターにも変化をもたらします。ずーっと都心に住みつづける意味をなくすからです。住みやすい福岡にも多くの第一線で活躍するクリエイターが移住するようになるかもしれません。

地方からすると黒船の来襲みたいなものです。実力もブランドもあるクリエイターが地方に住むようになると、住んでいるところでも仕事をしたいなーって思っても不思議はありませんし、広告代理店も欲しがるかもしれません。もしかしたら東京チームで美味しい仕事をとっていくかもしれません。

さて、そうなったときどうしたら良いのでしょうか?やはり、下請けでとりあえず凌ぐなんて方法でしょうか?まるで、大型スーパーショッピングセンターが現れて、地元の商店街が枯れていったような現象が起きるかもしれません。

ということで、地方のクリエイターの未来は、真の実力が試されるようなことになるのかもしれませんね。いままでは、地方だからこれで良いんだ。みたいなことがだんだん許されなくなるのかもしれません。

※参考書籍/AI時代の新・ベーシックインカム論 井上智洋

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