書きはじめるまで
小説を書きはじめるとき大切なことは、やっぱり気持ちを高めるってことです。モチベーションを燃え上がらせる。「書きたくて、書きたくて、もう我慢できない!」というところまで内圧を上げる必要がある。これは小説にかぎらず、他のことについても言えるように思います。
とくに小説の場合、基本的に誰も必要としていないものを書くわけですからね。ぼくの小説がなくても誰も何も困らない。そんなものを「どうだ!」って感じで世の中に投げ入れるわけです。社会にたいする挑戦状みたいなものですよね。ボクサーが試合をはじめるようなものかもしれません。彼らだって「この野郎、殴り殺してやる!」というくらいの気持ちになってないと、とてもリングの上で闘えないと思うんです。小説を書きはじめるのも似たようなところがあります。
1 はじめに
今年はみなさんと一緒に『源氏物語』を読んでいこうと思います。といっても、特別な趣向があるわけではありません。ただ漫然と、といいますか、最初の巻(帖)から順番に読んでいくというだけの話です。そもそも、ぼく自身がこの作品にかんしては初心者と言っていいくらいで、はじめて読む方とそんなに変わらないんです。通読したのは、若いころに一度だけ。谷崎潤一郎の現代語訳でした。うちの奥さんの嫁入り道具の一つだったんですね。それを読んだんです。とくに気にいったとか、感動したとか、そういうのはなくて、「まあ、こんなものか」と思った程度です。
その後は、必要があるたびに、ちょこちょこっと拾い読みをするくらいで、本格的に取り組んだ、ということはないんです。だからまあ、素人ですね。専門的な解説をしたり、蘊蓄を傾けたりといったことはできませんので、あらかじめご了承ください。むしろこれから、みなさんと一緒に読んでいきたいという気持ちです。全部読めるかどうかわかりません。たぶん読めないでしょう。飽きたらやめます。このあたりは無理をせずに、いい加減にやっていきたいと思います。
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