クリエイターとパトロン
クリエーターと呼ばれる人は今も昔もパトロンがいないと生きていけない人たちです。
宮廷音楽家、宮廷画家、宮廷文学、みなさんが知ってるとおりです。依頼を受けクリエイティブをすることによって生計を立てた人たちです。現代ではデザイナー(分野を問わず)、コピーライター、ライター、フォトグラファー、イラストレーター、作曲家、編曲家、プログラマー、ほかその周辺の人達全員がクライアントというパトロンがいないと生きていくことはできません。
自分の作品で生計を立てることができないから、クライアントの案件で生きていくしかない。当然したくない仕事が多く発生するでしょう。特に、自分の信条を曲げてでも仕事をしないといけないことなんかもあったりすると、アルコールで記憶を流しさるなんて事後処理が必要だったりします。そう、誰にでもある経験ですよね。
で、ぼくはこう考えました。自分の作品をつくりながら生きていく方法はないものか?もしかするとみなさんもそう思ったことがあったりしますか?それとも、そんなもんクリエイティブではない!自分の作品を作って売るなんでデザインではない!そう思いますか?
アートは自分の好きなようにつくって、デザインはクライアントを通して消費者の役に立つもの、とかいう概念を信じていますか?20年前の自分もなんとなくそう思っていました。
今のぼくはといえば、まわりの仲間に役に立つクリエイティブを届けることができれば、そして喜んでもらえれば別にアートでもデザインでもなんでもいいなと思っています。どうせ、概念なんて時代によって大きく変わるものです。「常識なんてぶっ壊せ」って言った人がいましたが、そのとおりだと思います。というか、クリエイティブしようとする人が保守的に常識に縛られているなんてね。20年前の自分が笑えます。
話がずれました、どうやって自分の作品をつくりながら生きていくことができるのか?
今僕らはインターネット網の中で生きています。インターネットとはリアルの世界では一生会うことがなかった人が、あっという間につながってしまう世界ですから、いままで不可能だったコミュニケーションが可能となります。
つまり、このインターネットを利用することで、クリエイターは広告代理店や出版社やミュージックなんたら会社を排除し直接生活者とつながり、生計を立てることができるのではないか!?
ユーチューバーやブロガーに代表されるSNSクリエイターは、ソーシャルプラットフォームをうまく利用して収益化しています。彼ら彼女らSNSクリエイターと、従来のクリエイターと大きく違うのはパトロンつまりクライアントがいないことです。出始めは学芸会だの座敷芸だの素人芸なんて言われましたが、そんなコトはどうでも良くて多くの支持を得て、そしてちゃんと自分の作品で生計を得ているわけですからすごいです。従来のクリエイターとは大きく違います。
今現在そこに気づいて、従来型のクリエイターが流れ込んでいます。もしかしたらこの現象はピークなのではないか?なんて思っているのでしたらそれは間違いです。これは入り口に過ぎません。
あの時やっておけばよかったという後悔をしないためにも、今からSNSを使った自分マーケティングを始める必要があります。
独立系クリエイターは必ずファンをつくらなければいけない。
といっても、ユーチューバーになろうと言っているわけではありません。また、ランサーズやココナラみたいなプラットフォームに帰属して儲けようというわけでもありません。プラットフォームというのはネットワークを使った新しい代理店なので、結局同じなわけで単に裾野が広がった分、仕事の単価が落ちてしまいクリエイターの安売りシステムにハマってしまうので馬鹿げてます。それに、このプラットフォームが廃業でもしたら、はしごを外され、あっという間に、ドツボにはまります。
ではどうするのか?簡単に言うと指名買いされるようになればいいのです。クライアントを頼る思考をとりあえずやめましょう。直接生活者とつながることを考える。そのためにどうしたらいいのかを考える。つまり、自分をプロデュースする、自分の商品を売るには自分を売り込めというわけです。
知らない商品は誰も買わないということは、デザイナーなら知っています。それと同じように知らない人の作品なんて誰も買わない。まさか、いい作品をつくったら売れるんだなんて言うのだけはやめてくださいね。
つまり自分ブランディング、セルフブランディングが必要です。自分を知って他者とのコントラストをつけ、世の中の地図に自分をポジショニングするわけです。
クリエイターって意外とこんなことやってないですよね。だって、自分はすごいんだ!なんて言えないですしね。できることといえば、賞をもらって人より優れてるってアピールするぐらいでしょうか?
いまからのクリエイターは、クリエイティブが生活者の生活をどのように変え、人生が豊かになるかをソーシャルプラットフォームや自分メディアを通じて発言し、無料でユーザーを獲得する努力が必要です。賞も大事ですが、その人が持っている世界観を訴えユーザーを獲得し、次にユーザーの中からファンをつくりだす。そのようなことをする必要性があるのです。なんと言ってもファンがいれば、作品だけでなく、知識でも売ることができます。
生活者は今、モノにお金を使うことから自分のためになるものにより多くのお金を払うという価値モデルへ移行しています。
健康、経済、教育、仕事など、自分の生活にプラスになる費用対効果の高い専用サービスには、より多くのお金を払いたいと思っています。つまり、作品を売る代わりに、知識を売ることだって可能です。クリエイターとして得た知識を売りながら、作品をつくる。というビジネスモデルも可能にします。
いずれにしても、ファンをつくることができれば、ユーザーと価値を共有しながら生計を立てることを可能とします。その際、真の100人のファンをつくることができれば悠々自適とまではいかないまでも、生活に困ることはないと言われています。
僕はこのように クリエイターが意識を変えると世の中の表現が大きく変わり、見え方が変わるのではないかと期待しています。そしてそれは、仕事の概念を変え、社会にパラサイトして生きるのではなく自立した個人社会が現れるに違いないと考えています。