世の中の経営者のほとんどが、経営資源としてデザインの一部しか使っていないのがとても残念です。使っているのは、売るための宣伝としてのデザインだけです。
じつは、売るためには会社や商品を知ってもらう必要があります。つまり広告(PR)が必要なのです。リアルとバーチャルに広がった消費者の世界に対して、会社はいかにコミュニケーションをとるのかを、いま以上に考えなければ知らぬ間に世の中から忘れ去られます。
では、どのようにコミュニケーションを取ればいいのでしょうか?とにかくプロダクトの連呼で、覚えてもらうというマスコミ・メディア戦略を展開するのが最も効率的なのかもしれませんが少なくとも数億円を使うことが必要です。できるのは限られた企業のみです。
99%の零細中小企業はとにかく頭を使うしかありません。どのようにコミュニケーションをとるか?それを実現するのが経営資源としてデザインを利用することです。うまく使えば少ない予算で多くの実りを手に入れる事ができます。
経営を変え加速化する、デザイン4つの要素
経営の第一歩は売る商品をうみだす、もしくは手に入れることです。商品がなければ商売ができません。そんなもんあたりまえじゃんとなるんですが、そのときにまず必要となるのが「考えるデザイン」です。
お金を儲けたいからだけで商売をするなんてことでは、消費者からは見透かされてしまいます。いまどきの消費者は情報にさらされ用心深くなっていて、そんな商品を買うわけがありません。
ただ情報が過多になりすぎて欲しいものがはっきりしてないのも事実です。消費者がまるで自分が望んでいるものが目に前に現れたように見えるとしたら、対象となる消費者のことを、つくっている人が一番知っているから、つまり消費者が本当に愛することが何かを知って、その商品をつくるからです。そのようなプロダクトをつくることが欲望の見える化です。そしてこれが「考えるデザイン」です。
そのプロダクトを表現するには当然「見えるデザイン」が必要不可欠です。そのプロダクトをテイストとして表現されなければいけません。
考えるデザインと、見えるデザインを組み合わせて、プロダクトや販売計画をつらぬくデザインができあがります。このことを「デザインポリシー」と定義してしまいます。このような商品を貫くデザイン戦略がなくては、情報過多の現代のユーザーには届きません。
そのデザインポリシーをもうちょっと噛み砕いて考えてみます。
デザインポリシーは4つのレイヤーを重ねたときにできあがります。
ベースレイヤー、会社(プロダクト)の世界観をつくって群れから抜け出す。
8月20日に書いた「世界観ってなんだ?最重要戦略」に詳しいので、そちらをぜひ見ていただいて、その時書けなかったものを少し付け足してみます。
消費者が一定の量だけ揃えば商売になります。ということは、仕事がうまくいくには、一定の数の消費者と出会うチャンスが必要になるということです。それをするための最高の道具がインターネットと、世界観なのです。
今からのビジネスで、世界観がなければただ単に金儲けしたいだけのように見られてしまいます。小さな会社にとってその評価は絶望的です。この世界観がデザインテイストを産み、同じ価値観を持つ人々をひきつけるのです。産み出した新しい価値と消費者の欲望をつなぐ世界観がこの後の大きな違いとなります。
二層、プロダクトに世界観を載せる
世界観をベースにプロダクトを産み出します。世界観がなくてはできないことです。自分のフィルターを通して消費者が共感できるものを世の中に発表します。もし、自分に表現するセンスがなければ外部の力を借りて、自分のフィルターを通せばいいだけです。もしくはその世界を実現できるデザイナーを内部に引き込み任せることです。スティーブ・ジョブズとジョナサン・アイブのように。
三層、魅力的な物語で心をつかむ
2月20日に書いた「ことばの魔力」にあるように、なぜこの会社をつくったのか、なぜこの商品を売っているのか、なぜ仕事をしているのか、そして幸せとは何なのか、そんなリーダーの「世界観」を消費者や一緒に働くパートナーへ、あらゆる角度から発信し続け、その世界の住人になりたいと思わせなくてはいけません。
四層、テイストをつくり上げる
物語によって言葉化した世界観を、イメージで表現することができればプロダクトのコンセプトとパッケージ、それを販売するセールス指針が一気に連動するようになり、会社全体で共有することができます。事業が加速するのは言うまでもありません。
このように小さな会社がデザインを上手く利用すれば、頭一つ抜け出すポジションをつくることができます。どんなにいい商品であっても、すごい商品であっても、自動的にヒットしたりするわけではありません。そのプロダクトが本当にいい商品ならばそこには必ず世界観があります。それを言葉化、見える化してテイストをつくりインターネットを使って広く伝えることばできれば共感を得ることができます。そこが購買への入り口となるのです。