ヒガシユウジのまるごとデザイン

デザインの価値は、デザインビューティだけじゃない

デザインって不思議だな~って思うときがあります。たとへばスマホ。かっこいいiphoneをもったら突然しゃべりがうまくなり営業成績が上がったり、女性への口説き文句がスラスラとでたり、写真がアートになったりなんかしないですよね。

だけどiphoneをもつとなんだかそんな気になってしまう。モノによってまるで自分が変わったり、物事がうまくいくような気がしてしまう。カンチガイしてしまう自分がいる。デザインがもつ不思議な力。モノのデザインで、するコトが変化するんではないかと思わせる。

実際は自分の能力が上がったりしないのに、なんとなく上がったような、再定義されたような気がする。モノによってするコトの実力が上書きされるような、でも変わってないんですけどね。

デザイナーがmacをつかう理由の一つは、macをつかえばまるでクリエイティブ力が上がって、素晴らしいデザインができそうなという幻想をもてるからですよね。そして他人から見ると、できるデザイナーのイメージを抱かれるというもう一つの理由もあるでしょう。

それだけmacのデザインはモノにも、OSにも最高のデザインがあたえられていて、多くの人が惹きつけられている。だからモノがコトへ多くの影響をあたえているのは事実なのです。

こんなことって、他にもいっぱいあります。PCの話が出たのでキーボードなんてのもそのさいたるものです。REALFORCE(超高級キーボード)をつかえば文章がどんどん湧いてきて、すごい記事がかけたり、プログラムがバンバンつくりだせたり、なんてありません。けど、そんな気にさせるモノの魅力があります

コトの素晴らしさを表現するのにどのような魅力が必要か?

そういうモノって高価なものですよね。高価なものは、いろんな機能的な理由もありますが、洗練されていなければ、まず売れない。価値の高いモノは洗練されていて当然ですからね。

つまり、コトの素晴らしさを表現するにはモノの魅力としての美しさが重要だということです。

しかし、すべてのものにこれが必要かというとそうでもない。なぜかそれを勘違いするデザイナーがそれなりにいるんです。モノの魅力は、かっこよさや美しい、などのデザインビューティだけではない。こころに届くペーソスやウイット、ユーモアは人を虜にしこころの琴線にふれます。

たとえば最近見た大衆食堂のwebサイトが、まるで料亭のようなつくりで、なんだか”おっ!”っていいたくなるようなデザインビューティって、ちょっとちがうような。これだと「ぼくのあの食堂はどこに行ったんだっけ」っておもいませんか?お店も、制作スタジオも、きっと大満足なんでしょうが、本来の良さをなくしているように思います。

だってなんかへんでしょ?ちゃんぽんや焼きそば、焼き魚定食、豚汁、この味を守って80年と言われても、料亭の味ではないわけで、大衆食堂はみんなのおふくろの味ですから、どこにでもある味だからいい、むしろ、そこに行くのはいつものふつうのあの味に会えるから、いつでもあの笑顔に会えるから、ではないのか?と。

だったら、ペーソスタッチでつくるべきでしょうし、小洒落た効果を醸し出すjavascriptなんて必要ないわけです。「今日もおつかれさん!夕ご飯用意してまっとるよ」って言われたらたまらないとおもいませんか?

結局使い方次第ですよね。モノとコトの関係によってデザインはその表情を変えなくては良いコミュニケーションはできません。

コロナウイルスというモノは、人のするコトを可視化してしまいました。今まで曖昧だった人それぞれの考えかたも言葉というカタチで可視化され、トゲがむき出しにされ、刺さってきます。自分は正しい、自分は正しいと。

デザインはこのトゲがむき出しになった、いまのことばの世界なかで、どのようにデザインすればいいのでしょうか?一つはっきりしているのは、広告デザイン的なものではない「新しいデザイン」が必要なんだということです。

まとめ

  • iphoneをもったら突然しゃべりがうまくなり営業成績が上がったり、女性への口説き文句がスラスラとでたり、写真がアートになったりなんかしない 。でもモノのデザインで、するコトが変化するんではないかと思わせる。
  • 高価なものは、いろんな機能的な理由もありますが洗練されていなければ、まず売れない。価値の高いモノは洗練されていて当然ですからね。
  • でもそれはモノのポジションによって変化するもの。デザインビューティは望まれないときが多々ある。
  • モノとコトの関係によってデザインはその表情を変えなくていけない。
  • コロナというモノは、人のコトや思考を可視化した。死の影を見た人のことばはトゲがむき出しにされる。そのときデザインはどう変わるのか

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