まるごとデザイン

ことばの魔力

ことばが、世界をデザインする

前回、経済学者と政治哲学の思想は市場を動かしている、という話をしたのですがその思想を伝えているのは言葉です。いうなれば言葉が時代をつくり世界をつくっている。そう言ってもいいと思います。

たとえば、今の新自由主義的市場の代表例は、マーガレット・サッチャー政権によるサッチャリズム、ロナルド ・レーガン政権によるレーガノミクスと呼ばれる経済政策なんでしょうが、そこに大きな影響を与えているのが、経済学者フリードリヒ・ハイエクです。サッチャーはハイエクの『隷属への道』をバイブルのように事あるごとに見ていたようです。そして「これからの経済政策は財政による社会保障、公共事業強化ではなく、金融政策、つまりマネーサプライを通じて行うべきである」との言葉をつくりだし、福祉国家イギリスの「ゆりかごから墓場まで」という言葉が上書きされ、規制緩和へと進み、国営事業が次々と民営化されていきます。

日本も同じように、中曽根首相の日本専売公社、日本電信電話公社、日本国有鉄道の三公社を民営化し、半官半民だった日本航空の完全民営化を遂げました。
小泉純一郎首相の「聖域なき構造改革」という言葉から、郵政事業と道路四公団を民営化、労働者派遣法の規制緩和という経済政策も生みだしました。それからアベノミクスへとつながるんですが、なんだかハイエクってすごいです。

ハイエクやその教え子の言葉が世界の経済を、生活を変えていったのです。思想と言葉の力を感じざるをえません。

ヒトラーは「わが闘争」のなかで、『歴史上、永遠の昔からこの世界にもっとも偉大な変革をもたらしたのは、語れる”言葉の魔力”である』と記しています。

ことばが、事業をデザインする

言葉というのは、できるだけ生きて伝えられればいいなと思いますし、それができる人を羨ましく嫉妬さえ感じます。バイラルにひろがるというのは、生きている言葉で、伝わった人に自分でも気づかなかった、今までわからなかった解決策が、まるで自分が考えついたみたいに言葉という形で現れることだと思います。

たとえば、1963年8月28日、ワシントンでキング牧師の「わたしには夢がある…」から始まるフレーズの演説が、そこに集まった25万人近い人を感動させたのは、それが自分の代弁者、自分の思っていることを言葉に変えてくれた、生きた言葉だからです。

「ナラティブ(ものがたり)が人間の行動の原動力となる」とノーベル賞受賞の経済学者シラーは、米CNBCのインタビューに答えています。ナラティブって、きっとキング牧師のメッセージのようなものだと思います。企業が作為的に作ったストーリーではなく、思想や、哲学を背景とした、人を鼓舞し扇動する言葉。そう、理解したほうがいいと思います。

アップルコンピュータの創業者スティーヴ・ジョブスは、「デザインの勉強をしたわけでもないし、特にセンスがあるわけでもない。電子工学について、知識もアイデアもなかった。」(フロッグデザインのフリードリヒ・フレンクラー)にもかかわらず、人々はに多くの影響を残し、伝説をつくり上げました。いまでも多くの人が崇拝さえしています。

「ジョブスの才能は学習するスピードが恐ろしく速いこと。そう、それから彼のカリスマ性。彼が言うことは、誰でも丸ごと信じてしまうんですね。」とフリードリヒ・フレンクラーは言っています。
「不可能なことを人々に頼む彼には、不可能が可能になると納得させる力がある」マッキントッシュソフトウエアデザイナーのアンディ・ハーツフェルドもBBSのインタビューでそう答えています。
彼が今でも人々を魅了しているのは、この”語る言葉を持っていた”からだとぼくには思えて仕方がありません。経済学者シラーの言う”ナラティブ”であり、ヒトラーの言う”言葉の魔力”です。

ネット社会は言葉が光速であっという間に広がります。ネット社会はテキストベースで、できあがっています。このナラティブ、言葉の魔力が、どうやらとてもとても重要な役割をはたしている。といえます。これを経営に取り入れるか入れないか、それは、みなさんが選べばいいことだと思いますが、広告代理店がつくった作為的なストーリーではなく、リーダーの思想や哲学が色濃く反映されたものでなければ生きた言葉にはならないとおもいます。

なぜこの会社をつくったのか、なぜこの商品を売っているのか、なぜ仕事をしているのか、そして幸せとは何なのか、そんなことが伝わらなければ今からの会社は消費者に受け入れてもらえない。ナラティブ経営というようなものが必要だと思います。

とはいえ、言葉について、どれだけクリエイティブになれるか、というのは簡単そうでとてもむずかしい。ぼくらは普段そんな訓練を受けているわけではありませんし、どう表現していいかわからないから、ナラティブだ、言葉の魔力を武器にする必要がある、と言われても大変です。

ぼくらラボでは、このネット時代を生き抜くために必要な書くテクニック、文章の書き方をみんなに手に入れて貰えればいいなと思い、ぼくらラボの共同設立者の作家である片山恭一さんに相談しました。すぐに賛同していただき「片山恭一の文章の書き方」を近日中に始めることになりました。その能力を手に入れてネット時代を生き抜き、言葉によってパーソナルブランドを確立し、みなさんの半径10メートルを変えることができれば、なんだか嬉しくなります。ぼくらラボは「いまからの生きるスキルをシェアする」がコンセプトなのでお役に立てればなんとも嬉しいかぎりです。もちろん、無料で公開します。今しばらくおまちください、おたのしみに!

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