随分むかしからデザインは付加価値をつける役割を求められているますが、ちょっと前の付加価値というのは装飾としての付加価値でした。同じ商品なら、パッケージが良いほうが高く売れる。というように。
しかし現在の付加価値はそれだけではなくメソッドとしての付加価値なのです。
ではメソッドってどういうものかと言うと、たとえば、あるデザインをランサーズみたいなクラウドソーシングで1万円でつくることができたとします。でも、おなじようなものが有名なデザインコンサルに頼むと50万円の請求が来ます。(もちろん、同じではありませんが)
なぜ、それほどの差がつくのか?
実は、デザインはつくっただけでは、今は効果を発揮することができないのです。デザインは運用方法をまちがえると単なる装飾になってしまいます。それがわかっているからこそ有名デザインコンサルはそれを売りにしているのです。この運用に当たる部分が簡単に言うとデザインのメソッドです。
デザインの運用方法が提示され、コンサルとアフターケアがついているから50倍の値が付き、しかも有名デザインコンサルというブランドの安心感とクオリティで満足させることができるのです。
つまり、単なるデザインだけでは付加価値がつきにくいのです。
いまどきデザインの優劣は、技術の違いから生まれにくく、それなりに良いものが生まれる土壌にあります。しかし同じようなデザインでも商品でも「あなたならではの付加価値」をつけるようにすれば低価格戦争から脱出することができるのです。
それではどうすればいいのか?
売れるためのたった1つの魔法
単価の低いデザインが、高いデザインになるには商品に付加価値をつけることが外せません。それが結局は売れる商品を生み出したりするからです。
その付加価値のつけ方はとてもシンプル。
商品をカテゴライズし直し、新しい売り方を模索することです。同じ商品でもポジショニングし直して新しい価値を生み出すということ。
たとえば、コンビニの数の4.5倍もある美容室の場合。
料金の価格帯や立地条件等がほとんど変わらない。その中でどのように付加価値をつけるのか?
その場合、普通のどこにでもある美容室がお客さんに営業をかけるなら「同じ美容室という土俵」で戦わないことです。同じ立地で、同じ価格帯ならば、まちがいなく価格競争に巻き込まれます。
だったら違う魅力を入り口にしたほうが良い。
たとえば、「ヘッドスパ専門店でオープンして、その延長としてカットメニューがある」というお店の構成にするだけで、他店舗との競争に巻き込まれません。
つまり、売り出し方のポジションをずらして、ちがう売り出し方をするのが新しい付加価値をつけることになるのです。
同じように、デザイナーが新規開店する美容院のクライアントから相談を受けた時、単にデザインのトンマナを導入しましょうと提案するのと、さきほど言ったように違う魅力を入り口とした美容院を提案するのとどちらが価値があるでしょうか?運用といったのはデザインシンキングみたいなものでもあるのです。
同じ土俵に立たないから、抜け出せる「安価地獄」
デザインの存在意義は究極的に言うと「利益を出す」ことですね。いまどきデザインのトンマナができることはデザイナーのあたりまえの条件でしかありません。同じ提案しかできなければ、縁故や価格競争に勝てない。これは他の商売にも当てはまります。
そう考えると、マーケティングを入口としたデザイン会社や、PRを入口としたデザイン会社のほうが今の時代には合っている。WEBデザイン事務所ならSEOサービスを入り口にした制作会社みたいに。
デザインも商品もそれだけの魅力ではなかなか売れない。単なるパッケージだけではなくそれをつくりだす空間と感情をつくりだすことが必要です。
つまり、サービスも商品も、環境も含んで商品なのです。お客さんはその環境全体を含んで買い物をしているということなので、商品環境全体を考えポジションを見直しデザインする必要があるのです。
付加価値って、時代とともにかわっている。とぼくは思っています。いまからの商品は運用するメソッドも含めて商品だと考える必要があります。