ぼくが福岡でフリーライターをやっているわけ

編集プロダクション?

ライター2

その頃ぼくは、アルバイトを紹介してくれた友達を含め、4人暮らしをしていた。といっても、住んでいたのは単身用のワンルームマンションだったから、それはそれは窮屈だった。けれども、ほとんど全員、お金というものに恵まれていなかったから、文句のひとつも言えやしない。6畳の部屋でたばこを吹かしたり、安い酒を飲んだりしながら無為な時間を送っていた。

 そんなぼくらではあったが、一応、共通の目的があった。それがバンドだ。いつの日かデビューすることを夢みて、ギターやらベースやらをジャンジャカジャンジャン鳴らして練習に励んでいた。しかしながら残念なことに、ぼくらには音楽の才能というものがまったく無かった。ギターを爪弾くたびに、ベースをベンベケベンとやるたびに、そのことが悲しいくらい明らかになっていった。「そろそろちゃんとした仕事につかないとなあ」。そんなことを考えていたときにきた、アルバイトの話だった。

 「わかったやってみる」とぼくは友達に言った。「そうか。じゃあ話を通しておくからよろしく」「了解」。そんな軽い感じでのノリで、ぼくはその仕事を引き受けることにした。「ライターか。まあ、何とかなるだろう、嫌だったら辞めればいいし」などと不遜なことを考えながら。

 紹介してもらった会社はいわゆる編集プロダクションだった(といっても当時のぼくは、それがどんな機能を備えた会社であるのかまったく知らなかったのだが)。事務所は福岡市のけやき通りという、いまでこそ色あせてしまったけれど、当時は羨望を集めていたエリアに置かれ、ぼくはそこでアルバイトの面接を受けた。何を聞かれたのかはもうすっかり忘れてしまったけれど、同時に筆記試験もあり、ほとんど回答不能だった。幾人かの作家と、その人が書いた本のタイトルを結びつけるといった、簡単なものだったが、何しろぼくは本をまったく読まない質だったから答えようもなかったのだ。

 「こりゃダメだわ」とぼくは食い扶持が無くなったことを悟り、帰りの道すがら、コンビニエンスストアに寄って就職情報誌を買った。「真面目に仕事探さないと」と、さすがに殊勝な気持ちになったからだ。狭い部屋へと戻り、それをペラペラめくっていると、この話を持ってきた友達が戻ってきた。「なんか、決まったみたいだね、バイト」「はあ?」「うちのボスにお礼の電話があったみたいだよ、『アルバイト紹介してくれてありがとう』って」

 こうしてぼくはライターのアルバイトを始めることになった。しかし、あの面接や筆記試験は何のためにやったのだろうか。喫茶店で『ゴルゴ13』を読むことくらいしか“読書習慣”がなかったぼくには何とも不思議な結果だったが、とりあえず仕事にありつけたことはありがたかった。

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