ぼくらラボインタビュー
プロデュース・ディレクション:東裕治
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2020.12.07
kawakami☓katayama
東:お二人に聞きたいのですが、例えば写真を撮る時にプロとして依頼を受けて写真を取る場合の時と、そうではなくってあるものにすごく情熱が湧いてきて撮ろうとする時、その境目というのがどうしてもあると思うんですがその境目が均衡してる時は良いのですがプロとしてお金をもらって取るのが嫌になってきたなあ創作意欲がなくなってきた、そんな状況になった時どうやって生きていくのか?多分、モノを作る人たちというのはその辺の悩みがすごく深いんではないかと思うんです。簡単に言えばクリエイターは、プロとしていっぱいお金をもらう方が幸せなのか、それともモノづくりを優先させるべきなのか?
片山:うーんと、今の話と噛み合うかどうかわからないんですけども、僕の場合だと、たまたま『世界の中心で愛をさけぶ』という小説が異常な売れ方をしたんですね。で、それは僕が意図したことではなくて、なぜかその流れに巻き込まれてしまったというような実感が強いんです。じゃあ300万部売れたとか言われていますけれども、それに対して僕がどう感じたかと言うとあんまり売れたことの喜びってたいしたことないなぁ、というのが実感なんですよ。
お金が入ってきて生活が楽になって生活の心配をしなくてよくなったというありがたさはあるんですけども、一人の制作をする者、クリエイターとして満たされるというのは、結構別な話で、本が売れたと言っても数字ですから、300万部売れたと言っても300万人の読者にあったとか交流があったとかいうものではないのですね。だからあんまりベストセラーっていうのはそれ自体として言えば虚しいっていう実感なんですよね。
東:まあそういうものかもしれませんね。創作というのは違うところに価値観があったりするので。
片山:SNSで繋がって、直接感想やコメントをもらった方がなんか僕はやりがいがあるなていう感じがしますね。
東:川上さんはどうですか?
川上:僕自身はですね、元々むちゃくちゃプロになりたいとかそういうんじゃなくって、好きなモノを撮ってそのままなっちゃった、みたいな感じなんです。今でもそうなんですけどもこれでお金をもらっていいのっていう感覚がずっとあるんです。それは例えば、取材でも自分の撮りたいものを撮ってるだけという感覚がまだあるんです。で、割と自然を多く取ってるんですけども、福岡では人をよく撮ってるんですけども、例えば片山さんがいて撮った時に世界が共有できたみたいなそんな感覚があるんです。自然だったら、この大自然と一体化したなみたいな感覚が好きでずっと続けてるって感じなんですね。
仕事で雑誌の取材なんかに行くんですけども、お店の人を撮ったり、料理を撮ったりするときも、なんかこの世界と繋がったなていう感じの感覚ですかね、それを感じることができてそれでお金をもらっていいのかなと言うのがずっとあって、そんな感じで僕は自然とプロになっちゃったんで、将来的に売れるものを作りたいとか稼ぎたいとか全く思ったことがなくって。
東:今でも思ってないですか?(笑い)
川上:今でも思ってなくって、で、本を出していますけども片山さんと違って、僕の本とか1000部売れたらヒットとか言われてるぐらいですから、そんな世界ですから(笑い)
片山:僕らもそんなもんですよ。
川上:ただ1000部と言うと、個展なんかを開いて、手に取った人とほとんど会えるんですよ。
片山:あぁ。
川上:会ってお話ができるんです。それでまたこの人たちとの世界が広がる。そういう感覚をすごく強く持っているんですね。だから川上さんの写真のファンですよっという方はだいたい顔見知りって言うか、それが写真をやっててすごく世界が広がった、だからお金はその後に自然についてきてるていう感覚なんですね。
東:いいなー、クリエイターにとって一番良いのは遊びながら飯を食うっていうのが最高なわけですから(笑い)。この先もこのような状況でずっとやっていきたいと思われてるんですか?
川上:ちょっとわからないですね、この先どうなのか分からないんですけども、やっぱりあの僕は写真を撮ってお金を稼ぎ始めたというのは30過ぎてからなんです。最初は嫌な仕事も、これを撮らなければいけないのかな?というようなものもあったんですけれども、福岡ってこれがいいところなのかなって思うのは、仕事をやってるとほとんど知り合いになっていくんですよね。
依頼してくるほうもあの時の川上さんかぁ、みたいな感じで大抵知ってくれているって言う、なんかコミュニティみたいなものがあって、川上さんはこういう風なものを撮る人だからこういうものをお願いしようとか、割とそういうのをわかってて依頼してくれるので、僕も好きなように撮っちゃってるんですね、だから最近嫌な仕事というのがあまりないんです。うん、というのがすごくいい、そういう感じで今来てるんですけれどもここ2年ぐらいかなぁ、ちょっと大変な、経済もそんなに良くなくって、雑誌もそんなに調子が良くなくって、そんな時も二人の仲間(ルスカファクトリーの泰武さん、砂和さん)との出会いから始まった、ささやかな仲間同士の関係で色々と広がってはいるんですけれども。
そして今は、コロナで大変な目にあってますけれども、ただこういう時期だからこそ見つめられるものというのはありましたね。
まあそれは経済だけではなくって、庭のささやかな植物だったり、そういうのがすごく見えてくる。
東:そうですね、僕らラボで言っている半径10メートルの幸せって言う。
川上:うーん、まさに半径10メートル以内のね。
東:大きな、世界を変えようというようなものではなくて、僕らの目の前のものを変えていったら、それがつながっていって幸せにならないかなそう思うんですが、たまに『それはいいけどね、笑えるぐらい理想論だよね』って言われるんですよ。
川上:あぁ。(笑い)
3話へつづきます。
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